今回の現場報告は公立教育機関の 2校からの報告です。日本教育を 必要としている生徒・児童を対象とした 日本語教育現場におられる先生方 からです。
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―広島市立基町小学校「世界なかよし教室」の取り組み―
広島市立基町小学校
本校は広島市の中心部に位置している。本学区は市内最大規模の公営住宅群であり、十数年前より中国残留者の引き揚げ後の定着地として入居が始まった。その後、残留者の子どもの家庭が私費で呼び寄せられ本校にも帰国児童が編入するようになった。近年、当公営住宅の高齢化と共に全校児童数は減少の傾向にあるが、その中で日本生まれを含め中国残留者関係の児童や、保護者の留学について来日した児童などは増えてきている。全校児童に占める帰国・入国児童の割合は3割を超え、本校の特徴の一つにもなっている。 本校では、帰国・入国児童学習教室を「世界なかよし教室」と呼んでいる。帰国・入国児童の日本語指導・教科指導が主となる。児童の実態に応じて、指導時間・内容を決めているが、ほとんどの場合、教科の時間(国語・社会・算数)を取り出しての個別指導である。文法・文型、語彙、漢字、読み取りなどの学習をしている。その他に、日本の子どもたちとの言語や文化の交流など、多文化理解の発信の場としての役割も果たしていきたいと考えている。その一つの取り組みとして、今年度は「世界なかよし教室展示室」の整備を行った。中国をはじめとし、いくつかの国の文化を知ることができる資料を展示している。また、日本語指導をしていない帰国・入国児童も含めて「全員会」という取り組みを行っている。同じ(近い)立場の児童の交流を図り、連帯感を持たせるとともに、日本の文化だけでなく自分や父母の祖国の文化を大切にする心情を育てるのが目的である。 1 学期は、「自己紹介ゲーム」「ひらがな・漢字パズル」「中国の冷たいデザート作り」などを行った。
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本校では、昨年あたりから、初期指導を必要とする児童の編入が増えている。半年もすると日常会話は大分できるようになってくるが、学習言語を身につけることができるようになるにはかなり時間がかかる。子どもたちの日本語力を伸ばすべく、教材・教具や指導方法の工夫に努めているところである。 |
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―帰国・入国生徒学習教室の授業について― |
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広島市立幟町中学校 |
言葉が充分でない生徒については、帰入国教室で日本語の指導を行っています。日本語学習が初めての生徒には、ひらがな・カタカナ、簡単なあいさつ、使用頻度の多い語彙を覚えさせる事から始め、日本語学習教材に従って文法を指導しています。来日1年ではまだ日本語の語彙数は800〜1500程度といわれます。日本の小学生の語彙数が約20000語であるのと比べると、その数がいかに少ないかお分かりでしょう。ですから、基礎的な日本語学習を終えて、ある程度の会話ができるようになった生徒に、長文読解や語彙や漢字の学習、国語の問題練習などの国語学習の取り出し授業が必要になってきます。 第二言語習得(母語以外の言語の習得)における研究にみると、生活をするために必要な言葉を習得するために要する年数は2年だといいます。そして、学習をするために必要な言葉を習得するためには7〜10年もかかるといいます。ですから現在、日常会話には困らないけれど、学習に必要とされる読解力・発音・語彙力などが不十分な生徒にも取り出し授業を行っています。また、取り出し授業だけでなく放課後補充学習や長期休暇中に補充学習を行ったり、課題をだしたりもしています。 帰国・入国生徒学習教室では仲間づくりのために休憩時間や放課後は学習教室を開放しています。生徒同志の交流の場とするとともに、担当教師が生徒と生活や学習について話したり、アドバイスをしたりしています。 また、日常の家庭連絡プリントやさまざまな行事や取り組みなどの補足説明を行っています。その他にも、日本文化を知り中国文化を伝える行事を企画しています。連絡さえいただければいつでも結構です。一度ドアをノックしてみてください。 |