修了生の声                    1996年度受講生

        「近況報告」      

              井手野下 嘉奈子  

 

 講座終了後の数年間、私は小学校で個別による日本語指導に携わってきました。市の予算で時間数が限られているため、子どもたちはサバイバルレベルの日本語にたどり着くのがやっとでした。その後の彼らがどうしているのかずっと気になっていました。会話をこなす彼らは「先生たちが意思疎通に困らない」ゆえに、それ以上の支援がないままでした。
 

 数年後、私は彼らが望まない進路しか選ぶ余地がない現実を目にしました。子どもにとって、成長、発達過程において、年齢に応じた思考を支える言語、知識を得る手段としての言語の獲得が必要であり、それが彼らの将来の選択肢の幅を確保するために重要だと、思い知らされました。

 

 そんなことがあった後、私は、ボランティアとして、自宅を訪問し、子どもに教えるようになりました。
  彼女は学校での個別指導を終了していますが、授業についていき、望む進路を実現するにはまだまだです。中長期的視野に立った日本語の学習の継続は大切ですが、同時に、勉強がわかって、友達と心が通じ合う、そんな日々の充実感や、自信を子どもたちが得られるよう手助けできたらと思っています。
 

 「日本語を教える」ことから、いろいろなことを知り、考えるようになりました。私自身も、子どもとともに成長していきたいと思っています。

 

 

9号トップページ